事例
Vol.1で「がんばったって無駄」「自分は変われない」という事例についてお話ししました。この事例は本人にとっても、そして関わる人にとっても大きなテーマだと思います。「がんばって成長しよう」「努力すれば自分は変われる」と世界中の人が想いを持って日々過ごしていたら、きっと平和な世界になると思います。
そこでVol.2では、例はVol.1と同じもので、別の種とりをしたいと思います。
種とり
キャロル・S・ドゥエックという世界的に超有名な心理学者の研究で「マインドセット」という考え方があります。人は自分の”能力”についてどのように考えているか? 大きく2つに分かれるというものです。
- Fixed Mindset(硬直マインドセットと訳されます)
- Growth Mindset(成長マインドセット あるいは しなやかなマインドセットと訳されます)
Fixed Mindsetの人とは
自分の能力は石版に刻まれたように固定的で変わらないと信じている人。このような人は自分の能力を繰り返し証明せずにはいられない。知能も、人生的資質も、徳性も一定で変化しえないのだとしたら、とりあえず、人間としてまともであることを示したい。自分の有能さを示すことばかりに心を奪われて、自分の能力でできることだけをやろうとし、自分の能力を試されるようなチャレンジを拒み、結果として成長の機会を得られずに過ごしてしまう。
Fixed Mindsetの人にとっては、自分の賢さや才能を証明できれば成功、自分の価値を確認できればそれが成功
Growth Mindsetの人とは
人間の基本的資質は努力しだいで伸ばすことができると信じている人。持って生まれた才能、適正、興味、気質は1人ひとり異なるが、努力と経験を重ねることで、だれでもみな大きく伸びていけると信じている人。チャレンジして上手く行かなかったとしても失敗とは考えず、それは今の能力が足りなかっただけでチャレンジした分成長できたと考えるため、さらなるチャレンジをして、結果として大きく成長できる。
Growth Mindsetの人にとっては、頑張って新しいことを習得できれば成功、自分を成長させることができれば成功
Fixed Mindsetの強い人はVol.1の事例にある「がんばったって無駄」「自分は変われない」と考える人になり、Growth Mindsetの強い人は「がんばって成長しよう」「努力すれば自分は変われる」と考える人になると思います。
ところで、皆さんの周りに相手の意見を頭ごなしに否定したり、相手が間違えたことを言ったらすぐ揚げ足をとったりして、自分を優位に見せようとする人っているでしょうか? 思い浮かばなければその方はGrowth Mindsetの人たちに囲まれて過ごしている人と言えるかもしれません。私は残念ながら思い浮かびます。そういう人は自分の成長に注力するより「(あくまでその人の基準で)自分より能力が劣る人」を見つけることで自身の自尊心を保とうとする、Fixed Mindsetの強い人と言えると思います。
ではなぜ Fixed Mindsetの人とGrowth Mindsetの人がいるのか? ドゥエック氏の本の内容をここで全ては紹介できませんが一つ紹介すると、子供の頃の褒められ方が大きく影響すると言われています。何か課題に取り組んで上手く行った時に「能力について褒められる」のか、それとも「努力したことについて褒められる」のかの違いです。例を挙げると、前者は「まあ、8問正解よ。よくできたわ。頭がいいのね」このように能力を褒められると、能力を褒められることだけをやろうとする、つまり自分の能力でできることだけをやるようになる、結果Fixed Mindsetになるそうです。一方後者の例は「まあ、8問正解よ。よくできたわ。頑張ったのね」このように努力したことを褒められると、もっと努力しよう、難しいことにもチャレンジしようとなり、Growth Mindsetになるそうです。
詳しく知りたい方は、マインドセット「やればできる!」の研究をぜひ読んでください。お父さん、お母さん、教師はもちろん、企業の管理職やリーダー的な仕事をする人、コーチ、講師などなど、人の成長に関わる人全員に読んでほしい本です。しかも読みやすいです。決して出版社である草思社さんの回し者ではありません(^ ^)
あるレジリエンストレーナーは、Growth Mindsetを身に付けることが、レジリエンスを高める一番の方法と考えているとおっしゃってました。Growth Mindsetを身につけたら、逆境(失敗や障害)にもめげずにチャレンジし続けて成長し続けることができると思うので、なるほどと思いました。Growth Mindsetを強く持つこと、人によってはドゥエック氏の本を読むことで大きく変われるかもしれません。ただ、特に大人となると長い年月かけて身につけたものなので人によっては簡単には変わらないかもしれません。でも振り返ってみると、私自身は社会人になるまでどちらかというとFixedの割合が大きかったと思います。ある程度成長はできると思ってましたが、自分で自分の限界を決めてしまうタイプでした。最初に入った会社で否応無しにチャレンジさせられ結果的に成功体験を得られたことが一つ大きなターニングポイントだったと思います。そして、その後さらに色々と経験を積み、特にレジリエンスを学んだことで、今ではGrowth Mindsetの割合がかなり大きくなったと感じています。私はレジリエンストレーナーとして、自分が変化してきた経験も活かして、1人でも多く人がGrowth Mindsetに変わる、よりレジリエントになるサポートをして行きたいと思います。