Vol.3 もっとポジティブになりたい

事例


物事をネガティブに考える傾向にある人の中に「もっとポジティブになりたい」とおっしゃる人がいます。では、ネガティブよりポジティブの方が良いのか?というテーマで、種とりしてみたいと思います。

 

種とり


心理学者カレン・ライビッチ氏とアンドリュー・シャテー氏共著のレジリエンスの教科書では、レジリエンスの本質となる7つの能力が定義されています。7つの能力とは「感情調整力」「衝動コントロール力」「共感力」「楽観力」「原因分析力」「自己効力感」「リーチアウト力」になります。7つの能力について説明すると長くなるのでここでは割愛しますが、「楽観力」が定義されていることからも、物事を楽観的に、ポジティブに考えられることはレジリエンスを高めることになります。またVol.1で紹介しましたマーティン・セリグマン氏のオプティミストはなぜ成功するのかでも、楽観的であること、物事をポジティブに考えられることに対する様々なメリットが書かれていますし、過度なネガティブ思考はうつ病につながる可能性があることも書かれています。

一方で楽観的過ぎる、ポジティブに考え過ぎることにも問題があります(セリグマン氏の本でも少し触れられています)。例えば健康への影響を無視して「大丈夫、大丈夫」と頻繁にジャンクフードを食べるとか、睡眠負債が溜まっているのに睡眠時間を確保するための工夫をせず「大丈夫、大丈夫」とさらに睡眠負債を増やすとか、仕事でミスしても「たまたま運が悪かった」と言ってミスした原因を分析せず同じミスを繰り返すとか。このように必ずしも楽観的なのが良い、ポジティブが良いとは、一概には言えないと思います。

セリグマン氏の本では、楽観性が重要となる職業と、適度の悲観主義が重要となる職業が紹介されています。

楽観性が重要となる職業
セールス、仲買業、広報、俳優など人前に出る仕事
寄付金を募る仕事、創造的な仕事、競争の激しい仕事
燃えつきる(バーンアウト)率の高い仕事

適度の悲観主義が重要となる職業
設計・安全工学、技術・コスト見積もり、契約交渉
財政統制・会計、法律(訴訟を除く)、経営管理
統計、テクニカルライティング、品質管理、人事・渉外管理

楽観的なこと、物事をポジティブに見られることは、挫折にめげない、粘り強いメンタルに通じます。一方で、慎重さが求められる場面では悲観的に、物事をネガティブな視点で見ることも大切になります。

ポジティブ心理学の講座の中で、建設的なポジティブ/ネガティブと、非建設的なポジティブ/ネガティブと考えると良いのでは?と先生がおっしゃってて、なるほどと思いました。それを表したのがこちらの4象限の図です。こちらは何かの研究結果から出てきたものではなく授業での話を基に私が表現した図ですので、そのことは念のためお伝えしておきます。(さらに言うと、人との信頼関係を高めるコミュニケーションの取り方として、積極的・建設的反応という研究がありますが、建設的/破壊的というのはそれをヒントにしています。積極的・建設的反応についてはまた別の機会で触れたいと思います。)

 

具体例でお話しします。例えば皆さんにとって、かなりチャレンジングな仕事の話が来たとしましょう。今の私ですと例えば「1000人参加するセミナーの基調講演でレジリエンスの講演を30分行う」とか(^ ^)

  • 破壊的ポジティブ・・・「今までのネタを使えば何とかなる」と言って、ほとんど準備に時間をかけず本番を迎える
  • 破壊的ネガティブ・・・「私なんかにはできない」「講演して酷い内容だったとクレームを受けたら嫌だ」と言って、出来る可能性を模索せず断る
  • 建設的ポジティブ・・・「今の実力ではかなりのチャレンジかもしれない。でもこれまでも何とかしてきたし、これまで以上に準備に時間をかけて、例え失敗してもいいからチャレンジして成長しよう」と言って、講演を受ける返事をして、準備に全力を注ぐ。
  • 建設的ネガティブ・・・「いきなり断るのではなく、リスクを洗い出して、失敗のリスクを最小限に抑える手を考えてから受けるかどうか決めよう」と、急ぎリスク分析と対策を考えて、講演を受けるかどうか返事をする。

こんな感じになると思います。ポジティブもネガティブも建設的に使えば人生を豊かにする結果になると思います。一方で、極端なポジティブは人生を狂わせてしまう可能性があり、極端なネガティブはチャンスを逃し続ける人生を送ったり、うつ病になる可能性があります。特に大事な判断が必要な場面では、今の自分がこの4象限のどこで考えているか確認して、別の考え方も出来ないか模索すると、視野を広げられると思います。

物事をポジティブに捉えすぎる傾向にある人はもう少し慎重に考える視点を持つようにする、物事をネガティブに捉えすぎる傾向にある人はポジティブな面を見る視点を持つようにすることが大切だと思います。そう言われても難しいという方は、例えば自分と逆の視点を持つ人(ポジティブな傾向の人はネガティブな視点を持つ人、ネガティブな傾向の人はポジティブな視点を持つ人)に意見を求めることで、物事が多角的に見られるようになると思います。
ちなみに、私がお伝えしているレジリエンストレーニング講座では、自分の思考パターンを知って、それとは別の思考が出来るようになる方法をお伝えしていますので、ご興味ある方はご連絡ください! ここは宣伝です(^ ^)

ポジティブ/ネガティブについては、レジリエンスにとって大切なテーマなので、Vol.3ではここまでにしますが、今後も色々な場面で触れていきたいと思います。